crossroads[31]見えないレールの上を走る未来の車
── 若林健一 ──

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こんにちは、若林です。先日のCEATECで、一度実物を見てみたかったテスラモーターズの車を見てきました。

テスラモーターズとはアメリカの電気自動車メーカーで、単にガソリンエンジンを電気のモーターに置き換えただけでなく、最先端の自動運転機能を備えた未来の車を作っている会社です。

テスラモーターズ
https://www.tesla.com/jp/


創業者のイーロン・マスク氏は、電気自動車に関する保有特許をすべてオープンにしたり(正しく利用する人であれば、誰でも無償で利用できる)、SpaceXという宇宙輸送事業会社を創業するなど革新的なアイデアを持ち、それを実践する人として知られています。

SpaceX
http://www.spacex.com/




●すべての機能は画面で操作

テスラモーターズの車は、運転席に設置されたタッチスクリーンによって操作できるようになっています。オーディオやナビゲーションはもちろん、エアコンの操作からサンルーフの開け閉めまでを、このタッチスクリーンで行います。

例えば、サンルーフの開け閉めなら、画面上に表示された車両の画像からサンルーフの部分を指でスライドさせるだけ。

画面の表示に従って操作すればいいので、これまでの車のようにどのボタンがどの機能に対応しているとか、レバーをどちらに動かすと何が動くか、といったことを人間が覚える必要はありません。

また、車の装備を操作するだけではありません。例えば、スケジュールデータを車と共有することができるようにもなっています。

つまり、乗り込んだ時には車が行先を知っているので、車に乗ってからカーナビに行先を登録する必要がないのです。

これだけでも充分SF映画の主人公のような感覚になれそうです。

●自動運転でできること

未来の車に期待する機能といえば自動運転。人間が操作しなくても、車が勝手に目的地に連れて行ってくれるのはとても魅力的です。

しかし、現実には自動運転ではなく「運転支援」にとどまるようです。

つまり、人間は車の中で眠っていても目的地に着けるのではなく、人間が操作することを前提に、その一部を支援してくれるだけなのです。

車が勝手にやってくれるのは、同じ走行車線を一定の速度で走り続ける、走行車線を変更する、駐車スペースに車をとめる、などの部分的な操作にとどまります。

完全な自動運転ができない理由は、大きく二つあるそうです。

ひとつは技術的な問題で、今は信号を認識できない。したがって、信号での停止や発進は人間が操作しなければならないためです。

もうひとつは法的な問題で、万が一事故を起こした時に誰の責任になるのかを明らかにしなければならないためです。

つまり、自動運転動作中に事故を起こしてしまったら、たとえ操作をしていなくても運転席に座っている人の責任になる。ドライバーは車が事故を起こさないように見張りの役目を負わなければならないのです。

技術的には、信号のない高速道路であれば自動運転で走り続けることができるそうなのですが、車が事故を起こさないか見張らないといけないので、運転席のドライバー(と呼ぶべきかどうか微妙ですが)は居眠りもできません。

車を運転する人ならわかると思いますが、他人が運転する車に乗るのは結構ストレスがたまるものです。

自分のペースではないので、ブレーキのタイミングひとつをとっても人によってはハラハラさせられることがありますが、きっと自動運転を見守るドライバーも同じ感覚でしょうね。

車を見張っているといえばそうなのですが、なんとなく車に使われているような感覚もあり、完全な自動運転が実現されるまではあまり楽しくない乗り物なのかもしれません。

●自動運転でできないこと

自動運転でできないことのひとつに、意外なものがありました。広いスペースには駐車できない、車を留めるスペースの周囲に別の車がとまっていないと、自動的に駐車できないのだそうです。

つまり、縦列駐車のように人間が不得意とする操作は得意だけれど、広くてどこにとめても大丈夫なスペースでは駐車ができない。

車と車の間を自分の駐車スペースと認識するためなのですが、人間には簡単にできることが、自動運転車にはできないというのはなんとも可愛らしい感じがします。

●インフラの整備も必要

完全な自動運転の実現のための技術的な課題として、インフラの整備があると考えられます。

信号を認識できるようにするためには、車の画像認識精度を上げるよりも、信号側から車に情報を送る方が簡単で正確な制御ができそうです。

駐車スペースについても、車のセンサーやカメラを増やすよりも、駐車スペースの方に情報発信する仕組みを埋め込んだ方がよさそうです。

つまり、自動運転とはIT技術で作られた見えないレールの上を走る列車のようなものになるような気がします。

飲んで終電を逃した時でも、車がひとりで迎えに来てくれる、そんな時代が早く来て欲しいものです。


【若林健一 / kwaka1208】
http://kwaka1208.net/aboutme/


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