装飾山イバラ道[187]わたしの〈挑戦の歴史〉のカケラたち/武田瑛夢

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今年は既に家の大掃除を始めている。10月にやってしまうと、後の二か月でまた汚れる気もするけれど、いまは暑くも寒くもない。夏にやった方が油汚れは落ちやすいという人もいる。人それぞれだ。

●ポイント・一気にやる

まずはキッチンの食材庫の中を一掃する。賞味期限の切れた缶詰や瓶詰もあった。もっと早く見ておけばよかった。とにかくすぐにでも捨てたいけれど、捨てる前に開けて、中身を捨てなければいけないので結構めんどくさい。

ダメ缶詰が出て来た食材庫の棚には、もう食材は置かないことに決めた。棚のスペースの分だけ無駄にしてしまう物が生じるような気がするのだ。

本当にダメなのは缶詰ではなくて私なのだけれど、そういう自責も考えすぎると掃除が進まないので、一旦あまり考えないようにする。

缶詰類の場所は滅多に使わない鍋置き場にしようと思ったけれど、「滅多に使わない」のだから捨てるべきかもしれない。

夫の実家からもらってきた食器類もあるし、棚から棚への移動だけでなく、家から家の移動を生き延びた食器類は、この後もしぶとく残っていきそうだ。

とにかく全部出して、棚を雑巾で拭きあげるととてもスッキリした気分になる。何もない状態の何と素晴らしいことか。奥にしまう物たちに、また顔を合わせるのはいつになるのかと思ったりする。

キッチンにスッキリとした理想の一角を作ってみると、そこを見本に美しさが広がっていく気がする。実際はそう甘くはなく、まだ捨てるには惜しい調理器具がいっぱいだ。徐々に全体量を減らしていくしかないだろう。





●ポイント・物から入る

物が増える原因の一つに「挑戦の歴史」がある。私の場合は料理への挑戦だ。

料理って作ったことのないことへの挑戦から始まって、そこそこ美味しく作れるようになるまでは、定番メニューにはならない。

自分が作れる限界の味まで行った時に「外で食べるのは好きだけれど、家で食べる料理じゃない」ことがわかったりもする。

その中では麻婆豆腐は、家で作ってもそれなりに美味しく出来るので定番メニューになった。中華にハマルと山椒に凝りだす人が多い。

同じ道を私も通ったけれど、結局は手に入れやすい材料ですぐにそこそこの味が出せればいいかなと思う。今回の掃除でいろんな種類の本格的な花山椒が出てきたので反省したのだ。

そして、ありとあらゆるスライサー。野菜を簡単にカットできるアレである。

今年の春に私の指を切ったアレでもある。厚みが調整できるタイプや、さいの目切りが一気にできてミネストローネがあっという間という物など。人参のシリシリができるおろし金や、野菜で麺を作る「ベジヌードル」が流行ったのでそれもある。

皆それなりに楽しかったけれど、年に数回使うかなというものだ。もうそろそろ懲りた方がいいだろう。物は私にとって挑戦のカケラなのかもしれない。

もっと凝る人だとそば打ち台や製麺機、燻製機器、ピザ窯なんていう、場所どころか環境まで考えないと済ないところまで行くと思う。

挑戦の最中の人にはエネルギーが溢れているのかもしれないし、楽しめるうちが華という気もする。そういう人はどう片付けるかを考えるのは、もっとずっと後でもいいと思う。

●ポイント・物の終わりかた

物への執着を断つことが精神の修行になるなら、掃除は良いことだ。管理する物が少量でまとまっていて、全体を見渡せると自分の中での掃除の大半は終わるような気がする。

洋服や小物も、持ち主を替え遊牧民のように移動しながら存在するものがある。娘の服を母が着て、母のバッグを娘がもらう。物の量は一向に減らない。人からもらった物には物以上の恩や気持ちが入っているので、断ち切るのはさらに難しいのだ。

買取のお店ではよほど価値のあるブランド服か、新品でないと洋服に値段はつきにくいみたいだ。布としてグラム単位で引き取ってくれるところもあるらしい。自分の物は自分のところで物としての終わりを決断するのも、一つの責任の取り方だと思う。

判断を先延ばしにせずに、終わりを見極めて捨てる。捨てた以上は後悔しない。これができればどんなに楽かと思うけれど、やはり決断というのは重いものである。大抵は「とりあえず保管」して心が完全に決別できる時を待つ。

物は居場所を移動する時に、持ち主に存在を気づかれて記憶の上層に上がってくる。棚に置かれて寝かされて沈み込み、また判断を迫られた時に「いつもの保留物件だし、この際捨てよう!」という答えが出される。

片付け専門家のこんまりさんの言う、トキメキがなくなった瞬間かもしれない。「今までありがとうございました。さようなら。」

捨てる作業をすると、手に入れる時によく考えるようになるというのも、掃除の効能かもしれない。心が変わる利点は、年を追うごとに感じる。

後先考えずに大きな物を買えた頃が懐かしい。一部屋カラにできるほど捨てられたら楽しいかもしれない。

本当は掃除中は考え事をしない方が捗るのだろうけれど、物にひっついている執着をひっぺがすには、一回はそれについて思い出してあげないと無理だと思うのだ。

それがハイヒールやブランドバッグならかっこいいけれど、さほど思い入れなんかないはずの、鍋やザルを見つめながら思うのである。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト "デコラティブマウンテン"
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ポケモンGOは夫の方がレベルが上がってしまい、私は遅れを取っている。最近は、変わったポケモンを近所のジムに置いてスクリーンショットで記念撮影をしている。ジムに置くには一瞬だけしかチャンスがないので、なかなか難しい。ルージュラは見た目も変だけれど、ゆっくり左右にクネクネ踊るのが不気味でお気に入り。

・ルージュラ
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