腕時計百科事典[26]腕時計のブランド(オーデマ・ピゲ)
── 吉田貴之 ──

投稿:  著者:



世界三大高級時計メーカーのひとつとされるオーデマ・ピゲは、企業哲学として「常に革新的かつ卓越した存在であれ」「美は純粋で一糸乱れぬ線に表現される」を掲げ、技術的な革新と芸術的な完成度を追求する姿勢を貫いています。

これは時計製造だけでなく、すべてのものづくりにおいて真似するべき哲学であると言えるでしょう。

●同級生

オーデマ・ピゲは、代々時計職人の家系にあったジュール=ルイ・オーデマと、小学校の同窓生でもある時計工芸家の、エドワール=オーギュスト・ピゲによって1875年に創業されました。多くの有名時計メーカーが集まるスイス、ジュウ渓谷のル・ブラッシュの工房からスタートし、現在もそこを本拠地としています。




●複雑高級腕時計専門

当初から複雑高級時計の専門ブランドを目指す意識が高く、部品製造から組み立てまでを一貫して行う生産体制を実現しました。同じく創設時よりマイスター育成のための工芸家養成システムを完備、運営しており、現在に至ります。

スイスの有名時計メーカーでは珍しく、創業以来、代々家族経営を貫いているブランドでもあります。

●ロイヤルオーク

オーデマ・ピゲが1972年に発表した「ロイヤルオーク」は、オーデマ・ピゲの時計づくりの姿勢を明確に表し、時計業界に大きなインパクトを与えました。

センターローターでありながら薄型の自動巻ムーブメント、という技術的側面もさることながら、文字盤周囲を飾る八角形のベゼルは高い評価を得ました。

現在製造されているモデルもほとんど変わらないデザインです。ロイヤルオークは、オーデマピゲのアイコンモデルとなっています。

●複雑機構の開発

オーデマ・ピゲは複雑機構の開発を得意とし、これまでに数々の名機を世に送り出してきました。

究極の複雑時計として、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーター、グランドソヌリ、アラーム、30分積算計クロノグラフ、スプリットセコンドなど、これでもかと機能をつめこんだ「ユニヴェルセル」を完成させています。

●時計工芸家の養成

オーデマ・ピゲは、独自の時計工芸家養成システムを構築しています。技術を高める方法を考えるのはもちろんですが、同時に技術を継承する方法を考えておかなければ、企業やブランドの価値を維持することが出来ません。

オーデマ・ピゲでは、若い職人たちが工房で働きながら、先人たちの培ってきた技術を学べ、デザインからムーブメントや部品の製作、装飾に用いるダイヤモンドの検品に至るまで、自社の専門家が一貫して作業を行うことが出来る環境を提供しています。

●マニュファクチュール精神

また、ムーブメントの開発と製造を専門に行う子会社「AP Renaud et Papi(ルノー・エ・パピ)」を2002年に設立。

こういった徹底したマニュファクチュール精神こそが、伝統技術を活かしながら常に高品質の時計を生み出せる理由なのです。伝統的工芸技術と斬新なデザインの融合、これがオーデマ・ピゲを世界最高級ブランドのイメージへとつながっているのでしょう。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
http://www.idia.jp/


兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。