わが逃走[191]沖縄の構造美の巻/齋藤 浩

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10か月の制作期間、うち半年に渡って校正作業を繰りかえした末、ついに冊子が完成。新製品のパッケージは想像以上の仕上がり、東京、金沢でのイベントもおかげさまで大成功。

てな具合にめでたく仕事が山場を越えたので、秋だというのに夏休みと称して沖縄に行ってまいりました。

今年の関東地方は10月になっても真夏日が続きましたが沖縄も同様、10月の下旬になっても、連日気温30度を超える異常気象でした。

地元の友人も「この季節でこんなに暑いのは初めてさー」とのこと。

さて、いつもなら大都会那覇をとっとと後にして、北部へ向かってそれっきりなのですが、今年は久々に都市部における美しい坂道や歴史的建築なども視野に入れ、南と北を行ったり来たりしてみました。

そのうちのいくつかの物件をご紹介します。

●首里の石畳とその周辺 奇跡的に戦災を免れた金城町の石畳道。

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歩くだけで琉球の文化が伝わってくるかのようだ。この道が失われるようなことが二度とあってはいけないよなあ。





ブラタモリでも紹介されていたけど、首里の高低差は実にドラマチック!

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曲線と曲面の立体的な交錯空間は、一歩進むだけでもエンターテインメント。

それでいて、そこかしこに歴史的物件が点在する。

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たとえばここ。金城大樋川(キンジョウウフヒージャー)と呼ばれる公共の水場で、かつてはここから各家庭まで桶で水を運んだとのこと。

実に神秘的な佇まい。おそらくこの水は、王様の飲んでたものや瑞泉酒造の仕込み水と同じなのではなかろうか。

●「エンダー」ことハンバーガーショップA&Wの牧港店。

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まぎれもなく50年代のアメリカ文化をそのまま持ち込んだ様子。おそらく沖縄最古のドライブイン建築のひとつ。ドライブスルー(?)も健在で、マイクに向かって注文すると店員が車まで届けてくれる。

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その昔は、当時のアメリカと同様にローラースケートのおねえさんが運んでくれたらしい。背景が青空とこの建築なら、思い切り似合ったことであろう。

●農連市場

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観光客にとって那覇の市場といえば牧志公設市場だが、地元の人にとっては農連市場なのだそうだ。

戦後復興期の印象を色濃く残すこの市場だが、再開発が進みすでに半分は更地、残りの半分ももはや風前の灯。もったいないなあ。

とはいえ、ギリギリのタイミングで来ることができて本当によかった。

●ホテルムーンビーチ

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沖縄最古のリゾートホテルとして名高い名建築。1975年竣工。それなりに年月を重ねた感じは否めないが、建物自体が熱帯雨林! という存在感には圧倒される。

訪れたのはちょうど夕暮れ時で、西の海に沈もうとする日差しを真横から受けたピロティ空間の“ジャングル”は脳裏に焼き付いて離れない。

ちなみに、この上に屋根はなく、雨が降ったら客室まで濡れていくことになる。素晴らしいコンセプト。

階段の造形も個性的で、とくに手すりのデザインは思わず見とれる美しさ。

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●那覇の小路

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前述のとおり、私は都会恐怖症なので、空港に降り立つと同時に北へと向かうパターンが多かったのだが、今回はちょこっとだけ那覇を散歩してみたところ、けっこう面白いじゃん!!

まったく興味のなかった国際通りも、一歩脇道に入ると車が通れないくらいの細道につながっていて、そのどれもが個性的。

迷路のような小路を抜けるとアーケード街に出くわしたりして、これはなんともスペクタクル。こいつあ一度那覇をがっつり散歩する必要があるなあ。

しかし、沖縄は暑いのだ。11月だというのに気温30度となると、それなりに季節は選ばねばならぬ。

散歩するならやはり冬か。まだ行ったことないが、1月とか2月とか、行ってみたいなあ。

というわけで、沖縄構造美散歩でした。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。