[4240] 翻訳サービスに潜むリスク

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《「お金」こそ共同幻想である》

■羽化の作法[28]
 なぜ段ボール村に精霊がいたのか?
 武 盾一郎

■crossroads[37]
 翻訳サービスに潜むリスク
 若林健一





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■羽化の作法[28]
なぜ段ボール村に精霊がいたのか?

武 盾一郎
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20161129140200.html
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●漠然と壮大なことをぼんやり夢想する

前回、「ここに精霊がいる」と書いたが、霊についての現段階での見解を記そうと思う。
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20161115140200.html
http://take-junichiro.blogspot.jp/2016/11/27.html

自分は「霊を描いてる」と言ってもいい画家なのだが、いわゆる霊感が強いわけではない。幽霊や魂の輪廻を天真爛漫に信じてはいない。むしろ、そういうスピリチュアルな言説には否定的である。

幽霊を見たり神秘体験をしたりする人がいるようだけど、自分はそういう体験はない。強いて言えば子供の頃、ひいお婆ちゃんが世を去る前に夢枕に出てきたくらいだ。

「霊」の存在は外的なモノなのか、脳内の現象なのか、分からない。

もし「霊」が存在するとしたら、きっと何らかのエネルギーで、霊が「人の形」をしてることはないだろう。霊にまつわる数々のお話は、ほとんど総て創作物で、きっと人間にはそういった共同幻想が必要なのだ。

現代社会は科学やテクノロジーに支えられてるイメージがあるので、物質的というか唯物的というか、共同幻想が存在してるとは一瞬はあんまり思わない。がしかし、「お金」こそ共同幻想で、私たち人類は「幻想」を中心に社会を形成させてる不思議な生命体なのだ。

ところがお金という幻想は宇宙に出来た物質と似た動きをする。物質はダークマターと呼ばれる重力の強いところに集まり、物質があればあるほど巨大化し、重さの乏しい星を食べて行く。重ければ重いほど重くなる。自然法則はとっても「べき乗」なのだ。

格差社会とはそういった物質の運動にほど近い動きを、お金がしている現れだろう。幻想なのに。そして幻想だから物質の限界を超えて変化が速い。

そこで、「霊が在るとする社会」はちょっと安心する気がする。恐ろしい自然法則から心を護るシールドとして、共同体の必要に迫られて太古の昔に創作された共同幻想。霊とはそういう役割として生み出された人類の発明品なのだ。と、理屈では考えていた。

ところが、だ。物質の大元が「震える弦」だとする超弦理論が正しいとすると、そもそもこの世界が、この宇宙が、「霊界」のようなものになってしまう。

「霊は人間社会の安寧機能として発明された」とする以前に、そもそも私たち自体が霊体であるのだ。鉱物も生物も含めて。

そして超弦理論から展開される理論として、私たちは事象の地平面に記述されたホログラムかも知れないという、私たちの正体は幻想でしかない可能性もあって、今僕は「幻想が幻想について思いを巡らせている」瞬間を過ごしてることになる。

なんだか壮大過ぎて途方に暮れるのだが、僕はこういう漠然と壮大なことをぼんやり夢想してるのが大好きだ。その為だけにアーティストになった、と言っても過言ではない。

●「場」と「コミュニティ」と「芸術」

「霊は人間の発明品である」「科学は突き詰めて行くとこの世は幻で霊界のようなものという摩訶不思議な結論にたどり着こうとしている」、というようなことを書いてきたが、上記とはちょっと違ってしまうのが「新宿西口地下道の段ボール村になぜ精霊がいたのか?」である。

段ボールハウスに絵を描いていた当時、新宿西口地下道の広場は一年中薄暗くて、空気がどんよりと溜まっているような雰囲気だった。何かが発酵してそうな感じで、「場」が怪しいのだ。

そんな怪しい「場所」に人々が「暮らし」始めた。人がいるだけではなく、煮炊き寝泊まりしてるのだ。

ただ、それだけだと精霊は出てこない。一人一人がばらばらに寝てた段ボールハウス、描き始めの頃は霊的な感じはしなかった。強制撤去があって地下広場に人々が密集し、暮らしを支え合うコミュニティが形成されて「村」の状態になって精霊が登場する。

いや、「村」になっただけでも精霊は出てこない。もう一つ必要だ。それが「芸術」なのだ。

芸術といっても上から降ってくるお偉い芸術ではなく、「場」と「コミュニティ」から湧き出てくる「芸術」だ。僕たちの段ボールハウス絵画は、まさしくそうだったと自分では思っている。

「場」「コミュニティ」「芸術」この三つが揃うと「精霊」が生じる。そして、これらが揃った場所は人を吸い寄せる。当時の「段ボール村」がそうだった。

精霊たちが小さくキラキラと村のそこいら辺に漂ってる。誰もその存在に気が付いてない。自分も含めて。

カメラマンがやって来て「ここも霊地のようだ」と言われ、再度見渡してみて初めて、ここにいっぱい精霊たちが居ると気が付いたのだ。

これらは自分の脳内現象(錯覚)でしかなく、「精霊がいた」と言う心を癒す物語が必要で創作したことかも知れないが。

「霊」は「在る」のか、「作られる」のか。またはそもそも「すべてが霊」なのか。

(つづく)

【武盾一郎(たけじゅんいちろう)/アートで自立】

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若林健一
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20161129140100.html
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こんにちは、若林です。

11月26日、デザイン・クリエイティブセンター神戸で開催された「神戸ITフェスティバル2016」に参加してきました。

「神戸ITフェスティバル」には、2013年に当日スタッフとして初めて参加し、以後3年間当日スタッフを続けてきましたが、来年からは「Comin' Kobe」というイベントと合体し、新たに「078」として生まれ変わるとのこと。

当時、ほとんど何の接点もないのに当日スタッフとして飛び込みましたが、スタッフのみなさんにはとても親切にしてくださり、イベント後も繋がっていただいた結果が今へと続いています。

今、自分が色んな活動ができるようになったきっかけのひとつでもあるので、別イベントとして継続するとは分かっていても、名前がなくなってしまうことに一抹の寂しさを感じます。

開催日が5月のGW期間中になるとのことなので、お手伝いできるかどうかはわからないけれど、出来る限り関わっていきたいなと思っています。

「神戸ITフェスティバル」のみなさん、本当にありがとうございました。

Comin' Kobe
http://comingkobe.com/

神戸ITフェスティバル
http://kobe-it-fes.org/

●賢くなったGoogle翻訳

さて、先週書きそこなった本題です。

既に他の方も話題として取り上げておられますが、Google翻訳が賢くなったということで大きな話題になりました。

それまでのGoogle翻訳といえば、数あるGoogleのサービスの中で使えないやつの筆頭であり、ネットでもネタにされるほどの翻訳精度。

今回の変化は、こないだまで学年で成績最下位だった子が学年トップに躍り出たような、たどたどしい英語喋ってた子がネイティブ並みにしゃべりだしたみたいな大きな変化で「Google翻訳君、何があったの?」って感じでした。

進化の理由は、Googleが翻訳エンジンに「ニューラルネットワーク」という人間の脳を模した技術を導入し、それが今回「日→英」翻訳にも適用されたこと。

どうして、「ニューラルネットワーク」を導入すると翻訳が賢くなるのかについてはさっぱり理解していないのですが、「人工知能の技術を使って、ものすごくできる翻訳者のモデルを作り、それを翻訳エンジンに導入したから人間が翻訳しているのと同じぐらいの精度になったんだろうな」と勝手に解釈しています(間違ってたらすみません)。

なぜGoogle翻訳は賢くなれたのか
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1611/27/news012.html

中の仕組みは賢い人に任せるとして、今回の翻訳精度向上は利用者として非常に嬉しいです。

私も、英文を書く時には翻訳サービスを使うことがあったのですが、これまではYahoo!翻訳、一択。自分の中では、いくつか試した中で一番精度が高いと感じられたのは、Yahoo!翻訳でした。

Yahoo!翻訳
http://honyaku.yahoo.co.jp/

精度が高いといっても中には明らかにおかしいものもあり、そのまま鵜呑みにはできないので自分の場合は、日→英は単語の意味を辞書で引く代わりに(単語をひとつひとつ)、英→日は自分で作った英文がおかしくないか(意図した日本語に翻訳されればOK)というように使っていました。

これが今までの翻訳サービスの私の印象ですが、今回のGoogle翻訳に関しては、翻訳結果をそのまま使えそうな印象ですね。

ただし、今のところニューラルネットワークの技術が導入されたのは日→英のみで、英→日はまだとのことですので、その点は注意が必要です。

●翻訳サービスを使う上で気を付けたいこと

翻訳サービスを利用する上で、注意しなければならないことがあります。

それは、翻訳したい文章をそのまま全文翻訳しないことです。特にビジネスユースの時には注意が必要。

例え翻訳サービスと言えども、文章をネットに投げればそこには漏洩のリスクがあるということを、常に頭においておかなければなりません。

仕事上での海外とのやり取りで翻訳サービスを使う方は多いと思いますし、今回のように精度が上がると更に利用しやすくなると思いますが、メールの本文や契約書などの文章をそのまま翻訳してしまうと、それらの情報が漏洩する危険性があります。

Googleのようにアカウントを作って利用するサービスの場合、その文章を誰が出したのかも分かってしまいます。利用しているネットワークの情報からどこの企業からのアクセスかも分かる場合がありますから、それらの情報を組み合わせれば、サービスに送った情報以上の情報が類推できるかもしれません。

できれば翻訳したい文章をそのまま送るのではなく、会社名や商品名など具体的な情報になるものは、別の言葉に置き換えた方がいい。

また、文章も必要なところだけを抜き出して利用する方が安全でしょう。

せっかくサービスが賢くなったのに、手間をかけるようなことをするのはもったいないのですが、念には念を入れということ。

決してGoogleやその他の翻訳サービスがデータを悪用しているというわけではないのですが、考え方としてはそういうことも可能であるということは、常に頭に置いておくべきです。

ただより高いものはないのですから。


【若林健一 / kwaka1208】
http://kwaka1208.net/aboutme/
CoderDojo奈良・生駒〜子どもためのコーディング道場〜
http://coderdojo-nara-ikoma.github.io/


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編集後記(11/29)

●牧野知宏「2020年マンション大崩壊」を読んだ(2015、文春新書)。ショッキングなタイトルだが、2020年に何かが起きるという話ではない。今後首都圏においても人口の増加が止まり減少していく。高齢化はますます深刻になり、社会全体の活力が失われていく。これから主に首都圏の住宅事情はどうなるのか、という見通しを語る。戸建ての空き家、マンションの空き住戸の氾濫が必ず起きる。マンションは戸建てにない厄介な問題、自分だけではどうしようもない「共同住宅」という重石を抱えている。空き住戸の激増とマンションの老朽化、コミュニケーションの崩壊、やがてはスラム化という危険性を孕む。

本来、マンションという共同体は区分所有者が徐々に入れ替わり、新陳代謝が行われていくのが前提だった。マンションが戸建て住宅を購入するまでのステップに過ぎなかった時代が去り、マンションに永住しようとする人が多数を占めるようになってきた。建物の老朽化と区分所有者の高齢化は同時に進んでいる。コミュニケーションの崩壊は、共同体から逃げ出す人々が増加することを意味する。続々とマンションから抜け出す人、抜け出せない人、自我だけを主張して建物に居座り続ける高齢者。マンションは勝手な人たちだけが勝手に暮らす館となってしまう。それは共同体としてのマンションの死に至る病だ。

高齢者が施設に入居を余儀なくされたり、死亡するなどして、空き住戸が目立つマンションも増えている。結果として、管理費や修繕積立金の滞納が日常化し、必要な管理、修繕すらままならないマンションも出てきている。売れない、貸せない(借り手がいない)マンションを相続した人は、マンションの共同体の一員として永遠に固定資産税、管理費および修繕積立金を負担し続けなければならない。空き住戸の増加状況によっては、スラム化するリスクと向かいあわなくてはならないのだ。深刻なことに、マンションという「負動産」の相続はこれからが本番らしい。戸建て以上に深刻なマンション空き家問題である。

これから住宅を買いたい、借りたいという若い人は読むべき本だ。これから長期のローンを組んで、マンションの住戸を取得するのはリスクが大き過ぎる。最終的に取得できる住戸の価値はまったく保てないどころか、大きく下落するリスクを抱えたものになる。マンションの資産価値は都内のブランドエリアを除いて幻想である。空き住戸問題や、他人の管理費の未納や滞納など、共同体の危険性を背負い込む可能性を持つのがマンションだ。一方、賃貸住宅としてのマンションは、借りる側にとって非常に都合がいいようだ。

わたしも12年後の二回目の大規模修繕時には、たぶんここにいないだろう。生きていたらの話だけれど。もちろん、マンションの相続はさせない。 (柴田)

牧野知宏「2020年マンション大崩壊」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B012CHHXAS/dgcrcom-22/


●2020年ってあと3年ほどなんですが……。/介護マンション(ケア付き高齢者住宅、シニア向け分譲マンション)が人気出そう。自分の身の回りのことのできる高齢者向け。老人ホームほど手厚くないので費用は安く、個人のプライバシーは保たれ、当直者がいて面倒を見てくれる。食事を提供してくれたり。

/うちのマンションは、うるさ方がいらして頼もしい。見慣れない人の出入りがあると、理事会の議題に上がり、民泊禁止の規約確認がなされた。

防災委員の募集があったり(出来上がった防災マニュアルはお粗末だった……手伝いたかったけど余力なし)、熊本の地震での免震マンション視察があったり。公開空地の使い方について厳しい人がいたりもした。最近はAEDがロビーに設置された。講習会もやるんだって。

台地にあるマンションで、文教地区。少子化どこ吹く風の地域で、小中学校の入学数は増え続けているそうな。あと30〜40年、この状態のまま保ってくれたらいいんだけどなぁ。うるさ方に長生きしてもらいたい〜! (hammer.mule)