[4257] FDM3Dプリンター「クホリア」の進化

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《こんなにおれがばかだったとは》

■ショート・ストーリーのKUNI[206]
 おれはおれを殴ってやりたい
 ヤマシタクニコ

■3Dプリンター奮闘記[89]
 FDM3Dプリンター「クホリア」の進化(その1)
 織田隆治




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■ショート・ストーリーのKUNI[206]
おれはおれを殴ってやりたい

ヤマシタクニコ
https://bn.dgcr.com/archives/20161222140200.html

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ふと気づくと、おれは会議室らしきところにいた。なんとなく見たことがあるような部屋だ。どこだったろうと思いながら、席に着いた10人ほどのメンバーの顔を見ているうちにギクリとした。

ぼさぼさ頭で血色悪く無愛想、何か不満でもあるかに見えるが実は単にそういう顔だという男。着ているのはグリーンのシェトランドセーター風の安物ニット。見覚えがある。若い頃のおれ自身だ。

どういうことだ。しかし、どう見てもあれはおれだし、そういえばこの部屋は…ま、まさかの「ゴーカク出版」! おれが若い頃3年ほどいた会社だ。

セット販売の問題集や参考書を作っていた。3階に会議室があって、月に一回会議があったような……気がするが、自信がない。なにしろ、そうだとするとかれこれ30年も前、大昔じゃないか。いや、だいたいなんでおれがここにいるんだ。

と思っているうち、会議が始まる。今販売している問題集セットに何か付録をつけろと、営業部に注文されての企画会議らしい。しゃべっているのは編集部長のマツヤマだ。

おっさんだと思ってたが、こうやってみるとまだ若い。無理もない。この時点でまだ30ちょい過ぎのはずだ。そうそう、マツヤマ部長の特徴は何と言っても額が広いのか、はげ上がってるのか判然としないヘアスタイルだった。

おれは改めてまじまじ見て、うなずいた。こちらを向くマツヤマの視線とガチでぶつかったが何の反応もない。どうやらおれの姿はみんなに見えてないらしい。ためしにげほ、げほ、と爺むさい咳をしてみたが聞こえていないようだ。

「……というわけで、みんなから案を募ったがあまりいい案が出なかったので、私が考えた『今からでも間に合うダイジョーブ君のおまかせコラム』でいくことにした。会員向け通信に連載していたコラムをまとめ、そこに新たにいくつか付け加える。評判が良かったら『ヨユー君のおまかせコラム』も作る予定だ」

30年前のおれの顔がなんだか紅潮してきたことに気づく。イライラしているようだ。何か言おうとしながらためらっているみたいだ。それにしても、こいつ、ダサい。髪が多すぎて暑苦しい。

服の趣味が悪い。イチゴ模様のシャツが全然似合ってない。グリーンのセーターとあいまってクリスマス風だが、わざとなのか。今すぐ脱がせたいくらい恥ずかしい。その恥ずかしいおれはさんざん迷ったあげく、流れがすでに次の議題に移ったころ……

「部長、さ、さっきのダイジョーブ君のおまかせコラムですが」と言い出す。

そうなのだ、おれは人前でしゃべるのが苦手なくせに目立ちたがりだった。かつ、タイミングがずれる。こうやって見ているとそのことがよくわかる。顔から火が出る。やめろ。

室内の全員が若いおれのほうを向く。マツヤマ部長がじろりとにらむ。

「なにかね、ナカタくん」

「ダイジョーブ君のコラムでいきましょうと提案したのは、ぼぼ、ぼくです。正確に言うと、ヤマナカ君とぼくがふたりで考えて……ぼくが直接出しました」

「そうだったかもしれないが、中身がいまいちだったので、私がかなり補足した。それと、タイトルに『今からでも間に合う』をつけたのは私なんだ。ここがポイントだ」

「で、でも!」

「それだけかい。では、さっきの話に戻って……」

30年前のおれは、怒りでぶるぶると震えるこぶしをテーブルの下に隠し、さらにごまかすために親指と親指をぐるぐるまわし、なかなかおさまらないので逆回転もさせた。

おれははらはらしながらそれを見守った。そばによって肩でもぽんぽんとたたけば落ち着くかもしれないと思いつつがまんする。なんとか会議が終わる。

「あー、むかつく。こっちが苦労して出した案が、結局部長の案になってるじゃないか!」

仕事が終わると若いおれは仲間と居酒屋に直行した。おれもついていく。若いおれはグチを言いまくる。仲間がなぐさめる。

「まあまあ、いつものことだよ」

「部長もああみえて、そんなに悪い人じゃないよ」

「一応、案が認められたようなもんだし」

「それに君、ヤマナカとふたりで考えたというけど、実際にはほとんどヤマナカが考えたそうじゃないか」

「そうかもしれないけど……まとめたのはおれだ!」

そ、そうなのだ。この件は覚えている。この頃、ヤマナカがおとなしいのをいいことに、おれはたびたび利用してヤマナカの案を自分が考えたようにして提出していた。とんでもないやつだ、おれは。おれはがまんできず、おれをぼこんと殴ってやった。

「ん? だれだ、いま殴ったのは。まあいいや。あー、酔っ払ってきた。次、行くぞ! スナック『めだか』!」

おなじみのスナックで、マイク片手に「ボヘミア〜ン」などと歌いまくる。これがまたひどい。声がでかいだけだ。おれはますます恥ずかしくなった。スナックのママがお世辞で「おじょうずね〜」と言う。

「おれ、バンドのボーカルに誘われたことあったんですよ。今からでもやろうかな〜」

お世辞を真に受けるんじゃないっ。いいかげんにしろ。もう一回殴ったが、つい手加減するのでこたえてない。

やっと店を出て乗った電車では、目の前に年寄りが来ても知らん顔だ。無礼者っ。年寄りが日常どれだけ体の不自由を感じているか知らないかっ。立ってるだけでもつらいこともあるんだぞ! おれは今度という今度は容赦せずバーン! と頭をどついてやった。

「痛っ!」

若いおれは顔をしかめ、思わず立ち上がってあたりをきょろきょろ見回した。その拍子に年寄りはすいっと席にすべりこんだ。思いの外たくましい年寄りだったようだ。よかった。

結局おれはアパートの部屋まで若いおれについていった。ぐでんぐでんに酔っ払ってて心配だったのだ。若いおれは部屋に入るなりそのままばたんと倒れこんだので、押し入れからふとんを引っ張り出してかけてやった。

まったくどうしようもないやつだ。こんなにおれがばかだったとは。こいつに比べたら今のおれは人間としてずいぶん成長したわけだ。やれやれ。

                 *

ふと気づくとおれは見知らぬ街の一角、安っぽい建売住宅の前にたたずんでいた。どこだここは。なんで自分がここにいる。と思っていると、向こうのほうからおやじがやってきた。どういうことだと思ってよく見ると、おやじのようで微妙におやじではない。

──え、まさか。

それは年取ったおれだった。多すぎて持てあましていた髪はかなり少なくなり、半分白髪だ。太ってはないが腹が出ている。左ほほにでかいシミがある。いや、そういうふうに細部を観察するまでもなく、全体にものすごく老けていた。ものすごく老けていて、おやじに激似で、そしてまぎれもなくおれなのだ。

年取ったおれはあっけにとられているおれにまったく気づかず、家の中に入っていった。おれは見えていないようだ。そのとき気づいたが、確かに「ナカタタケオ」という表札がかかっている。

小さいながらも持ち家らしい。ほほう。おれもあとをつけ、中に入る。年取ったおれは自分でカギを開け、自分で部屋の照明をつけ、近くの店で買ってきたらしいレジ袋をテーブルの上に置く。

テーブルに広げたままの朝刊の日付を見ると「2016年(平成28年)12月22日」となっている。元号が変わっているのもびっくりだが、それより何より、ここは30年後の世界なのだ! そうか。30年後、おれはこうなっているのか……。

おれはどうも独り身らしい。結婚しなかったのか。オッケー、オッケー。そういう選択もありだと思う。どころか、なぜみんな結婚して子どもを作るのが当然だと思うんだ。世間一般というやつが唯一の正解だなんて、どうして言えるんだ。

一度きりの人生、そんなものにかまわず自分の道を歩むべきじゃないか。いいぞ、年取ったおれ。それにしてもぱっとしない男だ。だいたい服の趣味が悪い。コートの下にてらてら光る布地で作った、薄いキルティングのベストを着ているが、なんだか昆虫の腹のようだ。それを見ているだけでむらむらと殴りたくなる。

「ただいま、よしこ」

いきなり年取ったおれが言ったのでびっくりした。年取ったおれはひとりごとを言う習慣があるらしい。着替えをしながら、湯を沸かしながら、普通にひとりごとを言う。

「おまえがおれに愛想をつかして出て行ってから今日で7年だね」

結婚してたのか、ていうか逃げられたのか!
 
「おれも再来年で定年らしいよ」

そういう年齢なのだ。30年後か。まあおれにしたらだいぶ先だけど。

「最近は年金予定額の通知とか来るんだけど、案の定というか、額が少なくてがっかりだ」

しけた話をするなよ。

「思えばこれまでの人生、ろくな会社に勤めなかった。初めて正社員採用されたゴーカク出版はすぐにつぶれたし、その後も入る会社入る会社、なぜかすぐつぶれた。雨男というのがあるならおれは倒産男かもしれない」

呪われた存在か、おれは!

「無職期間もあったしなあ。退職金も期待できないし、まだローンも少し残っている。年金だけでは食べていけないから、どこか再就職先を探すつもりだよ」

ローンまだ払ってるのか。こんな、千円くらいで買えそうなぼろい家なのに。

ぽんぽこぽんぽん、と音がした。電話がかかってきたようだ。年取ったおれがポケットから電卓みたいなものを取り出して耳にあてている。へー、あれが未来の電話か。ちょっとかっこいいなと思うが、この時代ではみんな使ってるものなんだろう。別に年取ったおれがかっこいいわけではない。

「はい、ナカタです……どうもお世話になっております……いえいえ、何をおっしゃいますやら。ああ、あの件でしたらどうにかまとまりそうです。ええ、ええ、ほんとうにお世話になりまして、ほんとにもう、××さまには何から何まで、ええ、ええ、もう、ほんとに、はいはい、とんでもない、何をおっしゃいますやら、どうお礼を申せばいいやら」

見えない相手に向かって平身低頭している。おれが「何をおっしゃいますやら」などと言うとはおどろきだ。これが「人間がまるくなる」というやつか。どうせ自分の言いたいことも言わずにのみこみ、いけすかないやつにでもお世辞言ったりぺこぺこしたりしてるんだろう。あーいやだいやだ。

人間、そうなったらおしまいじゃないかというものに、おれはしっかりなっているというわけか。手がむずむずする。目の前の年取ったおれを殴りたい。いまのおれのほうがずっとまともだぞ、絶対。

電話が終わり、年取ったおれはスーパーで買ってきたおかずで晩ご飯を食べ始める。食べ終わる。ひとりで茶をコップに注ぐ。ずずーっと飲む。

「おまえがいてくれたらなあ、よしこ」

うわ、めそめそし始めた。最悪だ。おい、しっかりしろ! 今度こそ、どーんと一発殴ってやりたくなってきた。

「よしこ……おまえは外見はあれだったが、料理はうまかった」

ほめたいのかけなしたいのか。

「でも、これはこれで楽しい生活なんだよ」

え、そうなのか?

「ひとりで自由に暮らすのも悪くないな。そうだ、今度、バンドやるんだよ、おれ」

おれはずっこけた。

「ついこの間、むかしゴーカク出版でお世話になったマツヤマ部長から連絡があってね。おやじバンドやってるから参加しないかと言われて。いやあ元気そうな声だった。その後送ってくれた最近の写真を見ると、意外なことに毛もふさふさしてるんだ。人間わからんんもんだな」

なんだって?!

「おれ、若いころから歌がうまいと言われてたんだ。ボーカルをやらないかと誘われたこともあったんだよ。ちょっと聞かせてやろうか」

いきなり「ボヘミヤ〜ン」と歌い出した。うう、ひどいもんだ。音程もあやしいし、やはり年取った分、声量が落ちている。そしてそれをカバーできるテクニックが全然ないということが、こんなにも悲惨な結果を生み出すとは。

いや、それとも今のおれの歌もこんなにひどいのか? まさか! ここまでひどいはずがない。おれは冗談抜きで腹が痛くなってきた。トイレはどこだ。

「♪破れかけのタロット投げて〜」脂汗がにじむ。頭痛もする。ほとんど拷問だ。「♪今宵も〜あなたの行方占ってみる〜」やややめてくれ、やめてくれ! おれはがまんできず、年取ったおれの頭を思い切り殴った。

ぼっこーん。

どてっと倒れた年取ったおれは、目をむき、なぜ自分が倒れたかとしばらく考え込んでいたが、やがて気を失ってしまった。

翌朝、年取ったおれが目を覚ましたころ、若いおれも目を覚まし、泥酔して帰った割にはちゃんとふとんをかけて寝ていることに気づいた。

「そういえばだれかがふとんをかけてくれたような気がするが、だれだろう。おふくろのはずがないし、やっぱり自分でかけたのだな」

まあそうともいえる。


【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
http://midtan.net/

http://koo-yamashita.main.jp/wp/


ひさしぶりにベランダでカメムシの姿を発見。エアコンの室外機の陰。一瞬どきっとしたが、どうやら冬眠しているようす。そうとわかれば、ゆっくり眠らせてやりたい。

それ以来洗濯物を干すときも、ハンガーを落として大きな音を立てたりしないよう注意しているが、三匹も殺しておいて何をいまさらですかねえ。


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■3Dプリンター奮闘記[89]
FDM3Dプリンター「クホリア」の進化(その1)

織田隆治
https://bn.dgcr.com/archives/20161222140100.html

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今回の投稿が本年最後。早いものですねぇ。

なんかこの前正月を迎えた気もするんですけどね。

今日、素材の買い出しで街中に行ってきたんですが、まだクリスマスってのも始まってないのに、お店ではお正月の飾りの展示が……

凄いなぁ、世の中ってのは。先を行き過ぎ。

まあ、そろそろ忘年会なんかも沢山行われて、もう正月休みの気分になりかけている人が沢山いるのかなぁ。

僕は、なかなかそういう気持ちにならないんですよね。

まあ、前置きはこれくらいにして、FDMの3Dプリンターはかなり早いスピードで進化しています。これは、ちょっと前にも書いたんですけどね。

最近、話題を振りまいているFDMプリンターがあります。

・Qholia(クホリア)
http://q-ho.com/products/Qholia/Qholia.php


これは、「株式会社久宝金属製作所」という、大阪にある会社がリリースした
3Dプリンターです。

「大阪3Dプリンタービジネス研究会」で、その発表が行われて数か月。
http://o3dprinter.com/


代表取締役の古川さんと初めてお会いしたのが「大阪3Dプリンタービジネス研究会」でした。

その時、古川さんから見せていただいたプリントサンプル、凄い! の一言しか出て来ませんでした。

コンシューマー向けの光造形のプリンターと変わらない造形。いや、それ以上の造形力を持っているように見えました。

その時は、かなり遅く丁寧に積み上げているようで、きれいだけど、実用に耐えられるものなんだろうか? というのが、正直な印象でした。

沢山の出力サンプルを見てきましたが、大体は何回もリトライして、一番きれいに出力した物を見せられることが多いんですよね。

お見合い写真やSNSのプロフ写真のような、奇跡の一枚みたいなもの。

そういったわけで、割と懐疑的になってしまっています。やっぱり、自分で使ってみて、本当に良いものかどうかを身を以て認識することが必要なんですね。

そして、この11月に先行販売が行われました。台数は10台。その中の一台を、幸運にも入手することが出来ました。

そして、待ちに待った納品の日がやってきました。納品には、古川さん自身が持って来られました。

そして、セッティング。

クホリアの発表会の際には拝見していましたが、じっくりと見るのは初めてです。まずはノズル径0.3mm、積層ピッチ0.1mmにてテストパターンを造形。

「これはやっぱり凄い」

このクホリアというFDMの3Dプリンターは、これまで高価な光造形プリンターでしか出来なかった表現が、FDMでプリントできる凄いプリンターでした。

何か、凄い特別な機能が付いているわけではありません。

僕は4年前からFDMの3Dプリンターを使っていて、分解したり、メンテナンス、改造もしてきました。

クホリアの凄いところは、ユーザーの立場で考えて作られたことにあります。

「ここ、こうなってたらいいのになぁ」って思っていた所が、全部そうなっているんですよね。

「痒い所に手が届く」と言うべきでしょうか。

造形テーブルの軸の剛性や、エクストルーダーの設置場所、ヘッドの交換方法、セッティングのし易さなど、これまで歯がゆい思いをしていた部分すべてに色々な工夫がされています。

そう。こういうことなんでしょうね。

細かい工夫が上手くミキシングされており、その結果、この素晴しい造形に繋がっているんですね。モノ作りの「こだわり」が、伝わって来ます。

で、実際に色々とプリントしてみて、気がついたことを挙げてみます。

まず、先ほども少し書いた「造形テーブル」のZ軸(上下)の移動です。

これまで僕が使っていたFDMの3Dプリンターでは、造形テーブルは1軸、もしくは2軸でZ軸(上下)に移動する軸が付いていました。クホリアでは、4軸になっています。

大体はテーブルの奥に2軸のシャフトが付いていて、そこから「片持ち」となっているプリンターが多いです。この形状では、造形テーブルに造形物が積層され、重くなっていくに従って、微妙ながら手前が下がって来ます。

そのわずかなブレを抑えるために4軸になっており、このことで造形テーブルのわずかな傾きを起こさないようになっています。

あと、造形テーブルを上下させるためのボルトですが、僕が見た限りのプリンターでは、下から寸切りボルトを支える状態のものが多かったのですが、クホリアは上からぶら下げる形になっています。

これで、本当に微妙なことですが、テーブルのブレを抑えているんですね。テーブルとヘッドノズルのわずかなブレを抑えることに成功しています。

高速でヘッドが動いても、ヘッドと造形テーブルのブレがかなり少ないので、造形物の積層への影響が少なく、積層ピッチが安定して、スムースな表面になるわけですね。

なんで今までこれ、なかったんだろ。

そして、エクストルーダーと呼ばれる素材を送る装置です。

初期のFDMでは、ヘッドノズルの部分にこのエクストルーダーが付いているものが多かったと思います。これでは、ヘッド部分が重くなり、慣性の法則により、「動き出す」「止まる」といった動作の際、微妙なズレが出ていました。

そこで、エクストルーダーがヘッドノズルとは別れて行き、そこからチューブ等を通ってヘッドに送られるような3Dプリンターが出て来ます。

これは、ヘッドをなるべく軽くすることで、ヘッドが高速に動いても、「動き出す」「止まる」といった動作の際のブレを抑えるようになっています。

この工夫により、格段に造形物はきれいになってきました。しかし、造形テーブルのサイズが大きくなるに従って、エクストルーダーからヘッドまでの距離がどんどん遠くなってしまいます。

チューブを通ることで、材料とチューブの擦れる距離が長くなり、大きな摩擦が起きます。その結果、エクストルーダーからの力が均一にヘッドに伝わらなくなります。

微妙な力加減が変わることになり、ヘッドから押し出される樹脂の量に、微妙な差が生じて来るんですね。

クホリアでは、当然ヘッドとエクストルーダーは別れて設置されています。しかし、できるだけヘッドとエクストルーダーの距離を長くしないような、工夫がされていました。

なんと、エクストルーダーが回転し、ヘッドの動きによって追従する仕組みになっています。

これまでのFDM機では、エクストルーダーが固定されており、どうしても素材を送るチューブが長くなっていましたが、このクホリアでは、この工夫によって最短の距離で造形ができる仕組みになっています。

摩擦を抑えることで、均一な力でヘッドから素材が絞り出される仕組みですね。

これは、目からウロコ。

他にも色々な工夫がこの3Dプリンターには施されています。

長くなっちゃうので、この先は年明けの掲載にしようかと思います。お楽しみに!!!

いやぁ、凄いプリンターが出て来たものです。

それでは、皆さん良いお年を!!!


【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
oda@f-d-studio.jp
http://www.f-d-studio.jp



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編集後記(12/22)

◎デジクリは明日から長い冬休みに入ります。2017年は1月10日(火)にスタート予定です。みなさん、よいお年をお迎えください。

12月31日(土)に「デジクリゆく年くる年」特別号を発行します。


●加治将一「禁断の幕末維新史・封印された写真編」を読んだ(2016、水王舎)。この人の小説は下手過ぎるし、ノンフィクションもあまりお上手ではないのだが、トンデモぶりが面白く、つい手をのばしてしまうのだ。「拡散的疑問から収束的疑問を通過して結論を得た」(どういう意味だ?)という自分に忠実に描いた著作は「歴史殺し」とまで言われているようだが、これが「加治史観」であると開き直る。わたしのような酔狂なファンが意外に多く、今までの著作は増刷に次ぐ増刷でロングセラーとして定着している、とは本人談だが。最新作のテーマは今まで読んだものばかり、龍馬殺しだけ初見のような気がする。

タイトルは「坂本龍馬暗殺の真犯人は目の前の男だった!?」、ええっ、対面していたのは親友・中岡慎太郎だよ。定説では龍馬を倒幕の張本人として狙った、京都見廻組の犯行だとされているのだが。龍馬は寺田屋で伏見奉行所の捕り方に急襲された後は、ボディガードを雇って用心に用心を重ねていたはずだ。なぜ刺客を防ぎ切れなかったのだろうか。「もし、犯人が警戒をゆるめる相手だったら?」暗殺の成功率はぐんと高くなる。筆者によると、龍馬は土佐藩のスパイだった。一介の郷士が剣術修行で江戸行きを許されるわけがない。後に龍馬は脱藩するが、それは藩による密命で、露見しても切り捨て可能な存在だ。

龍馬は勝海舟、松平春嶽との出会いで人生が決まり、大政奉還という奇手で徳川家を温存する。もはや幕府のVIPである龍馬が、新選組や見廻組に命を狙われるはずがない。幕府には暗殺する動機がない。しかも、警備の厳しい土佐藩邸の斜め向かいの近江屋に、大胆に押し込む刺客がいるだろうか。龍馬は多くの修羅場をくぐってきたから、危機管理能力は高い。ピストルを持っている龍馬に、警戒されずに近づける人物はただ一人、中岡慎太郎しかいない。龍馬は至近距離からあっという間に斬られた。居合いである。剣の腕は中岡のほうがはるかに上だったという。龍馬も反撃し、中岡も負傷、数日は生きていた。

大政奉還後の政局は、武力革命派の岩倉具視、大久保利通、薩摩藩、長州藩、土佐藩の一部(中岡ら)VS無血革命派の龍馬、後藤象二郎、勝海舟ら、である。近江屋に乗り込んだ中岡は龍馬と直談判に臨んだが、龍馬は頑として考えを曲げない。中岡には岩倉、大久保との約束がある。律義を絵に描いたような中岡に妥協はなかった。というわけで、龍馬暗殺の真相は土佐藩の内ゲバだったというのが加治説である。事件後、関係者はみな口をつぐみ、わずかに残る証言はみな陳腐。遺留品は偽装工作がみえみえ。おかしなことは山ほどあるが追及されずに闇の中。これが「加治史観」だ。いい線行ってると思う。 (柴田)

加治将一「禁断の幕末維新史・封印された写真編」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4864700575/dgcrcom-22/



●来年の手帳。ダイゴーのマネジメント手帳はどうかなぁ。プライベートとビジネスを分けてメモりながら頭を整理したい。

手帳関連だとデジタルツールは使っているが、紙のものも必要だと思っている。デジタルは決まったもの、仮のものを入れるにはいいけれど、整理するのには使いづらいの。

卓上月間カレンダーを机の上に立てて置いていて、締切や外出予定、支払い期日や口座引き落とし日などを記入。Googleカレンダーにも入力してあり、これはアラームや検索、ライフログ統合のために利用。紙のほうはチラ見するためのもの。

仕事が詰まってくると曜日や日付がわからなくなる。なので机の前のカレンダーをチラ見し、そろそろ銀行の残高チェックしなきゃなぁ〜とか考える。手帳を開くという動作すら面倒くさい(笑)。

ガントチャートは複数の仕事の作業確保日を一覧するのに使う。必要日数を考えた後、割り振っていく。ここにはプライベートなものも入れてあり、法事で一日動けないからここは作業日として確保できないとか、半日潰れるから予備日程度だなとか、翌日大事な打ち合わせがあるから、前の日はよく寝ないとなぁとか。

これはA4用紙とフリクションペン、透明のクリアファイル。デジタルにしようと考えたことはあったが、これもチラ見したいのだ。遊びたいなぁと思った時に、これだけ詰まっているんだから無理よねと納得させるのだ。締切まで日数があっても、作業日はこれだけしか取れないのだと己に言い聞かせるのだ(笑)。

日々のはウィークリーのバーチカルタイプ。ここに落とし込んでいくが、ほんっとーーーーに、計画通りには進まない。積み残しが毎日ある。以前書いたと思うが(没にしたかも)、能率手帳NOLTYの学生用手帳を利用。B6、160ページ。薄くて軽い。目標や振り返りスペースを使いたいものの、ToDoのためのメモ欄になっていて使い切れていない。24時間、一週間をどう過ごしたかの時間統計にも使いたかったが果たせず。

来年はスコラのA5版にしようか、クオバディスにしようか、ジブン手帳も面白そうだなぁとか考えているうちに出会ったのが、ダイゴーのプロジェクトダイアリーとマネジメント手帳。

プロジェクトは月間予定表の下にガントチャートがついていて、便利そうで迷いつつ、追加の別冊手帳にもなるらしいので必要そうなら買おうかと。マネジメントは時間軸以外のフリースペースが4つのパートに分けられている。奥様ならお使いですよね? な、自分や家族ごとの予定が記入できるアレです。

例えば、レギュラー仕事、スポット仕事×2、プライベートと家事なんかで分けて使うのはアリかなぁと。いまToDoはペラ紙に十字ラインを入れ、4つのブロックに分けて利用しているのだが、これを手帳で実現できるんじゃないかと。予定管理というよりは、計画に使うような気もしつつ。

A5サイズも出たらいいのになぁ。時間軸が横なのもなぁ。フリースペースの大きなバーチカルを探して、そこに区切り線を引くってのもアリだなぁ。 (hammer.mule)

NOLTYスコラ
http://www.noltyplanners.co.jp/scola/product/


クオバディス エグゼクティブノート
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01GFBCPRS/dgcrcom-22/


ジブン手帳 Biz
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01JI1PA4W/dgcrcom-22/


プロジェクトダイアリー
https://shop.daigo.co.jp/item/4224/


マネジメント
https://shop.daigo.co.jp/item/28788/