3Dプリンター奮闘記[90]FDM3Dプリンター「クホリア」の進化(その2)シゴトバLAB 3Dプリントコンテスト
── 織田隆治 ──

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2017年になって、初めての記事です。本年もよろしくお願い致します。

年末にクホリアという新しいFDMの3Dプリンターの記事を書きました。その続きをちょっと。

この3Dプリンターですが、地味に良いのがフィラメントの置き場所。これまでの3Dプリンターでは、内部にカセット式で投入したり、上部にひっかける所があって、そこにぶら下げたりという構造の物がほとんどでした。

通常、フィラメントはリールに巻かれた状態で販売されています。そのリールの中心の穴に、だいたいは棒のような物を突っ込んでぶら下げるだけのものが多いんですが、このクホリアの場合、2本のボールベアリングの付いた棒が2本平行に付いており、そこにのせるだけの構造になっています。

これ、非常に良いですね。FDM3Dプリンターは、このリールに巻かれたフィラメントを、エクストルーダーでヘッドに送るんですけど、クホリアはその間の摩擦を出来るだけ少なくするように出来ています。



まず、リールの穴に棒を突っ込んだだけですと、リールが回転する際に、軸になる棒との間に摩擦が生じます。たした事ないと思うかもしれませんが、その摩擦さえも、少しでも取り除く工夫がされているんですね。

リールの穴と棒の摩擦、エクストルーダーからヘッドまでのチューブ内の擦れの摩擦、この二つを少しでもなくし、ヘッドから送らせるフィラメント素材を、出来るだけ安定して絞り出せる工夫です。

ほんのちょっとした事のように思えますが、こういったちょっとの工夫の組み合わせが、この驚くべき出力の結果を生み出しているわけです。

それから、ヘッドの交換がかなり簡単にできるのようになっている事も上げられます。通常、FDMの3Dプリンターのほとんどが、真鍮等で出来たヘッド部だけを交換する仕様になっています。

クホリアの場合、ヘッド、加熱部、温度センサーが1ユニットになっており、そこをネジで緩めて外す仕様になっています。

ヘッド部だけを取り外す場合、締め付けがきつ過ぎたり、ユルすぎたりすると、きれいに出力できない例が出て来ます。そこで、その部分を1ユニットにする事で、その微妙な調整をユーザーが行わなくていいようになっています。

ヘッドの交換時には、そのユニットを取り外し、ヘッドとテーブルの境目に薄い金属板を挟んで新しいユニットを取り付け、その金属板の上に落としてネジを締めるだけ。

これは楽です。何も考えずに、テーブルとヘッドの距離を一定に保つ事が可能になっています。

デメリットとすれば、1ユニットにしたため、ヘッドの価格が上がってしまう事ですが、そんなの数か月に一回ですし、それよりも交換する際に微調整をしながら、ヘッドの上下方向の位置を決めていく手間がないのが助かります。まあ、これは個人差もあるかとは思いますが、僕の場合はこの方法がいいですね。

他にも、出力している最中に、Gコードの設定に関わらず、ヘッドやテーブルの温度調整ができたりする事も良い点だと思います。何層か出してみて、ああ、もうちょっと温度を上げたいなぁ、下げたいなぁ、とか思う事も結構あるので、これは嬉しい仕様です。

まだ諸々小さい工夫が沢山詰め込まれていますね。それはまた今度。

●「シゴトバLAB 3Dプリントコンテスト」が……

で、話題は変わりますが、1月15日(日)に、昨年の12月16日に応募を閉め切った「シゴトバLAB 3Dプリントコンテスト」の授賞式/展示会、懇親会を行いました。

当日、と言うか、前日の晩、日本に超絶が寒波が押し寄せました。う〜ん、これは授賞式/展示会、懇親会に来れない人が増えるだろうなぁ……。一回目のキックオフ的なイベントでしたので、ある程度沢山の方に集まってもらいたかったのに……と、肩を落としていました。

実際、京都の出席予定者から、「雪が凄くて行けない、というか車も何も動かないので、家からも出られない」というメールが、恐ろしい積雪の写真と共に送られてきたりしていました。

1月15日(日)には、表彰式が終ってから、協賛各社様の3Dプリンターや3Dスキャナーの展示も行い、ケータリングを突つきながらの懇親会も楽しみにしていましたので、僕のガッカリ感は結構なものでした。

ちょうど、3年前の大雪の日に行った幕張メッセで、遭難するかと思うような体験をした事も思い出したりして。

当日の朝、窓から外を見てみると、大阪市内は雪はおろか、雨さえ降ってませんでしたので、もしかしたら……という期待を胸にシゴトバBASEへ。

ところが、開場すると結構な人が押し寄せて頂けているではありあませんか!授賞式を開会する時には、開場は結構な人数。各部門上位3名の方の発表の後、最優秀賞の発表をする際には、開場は本当に熱気に包まれていました。

おおお! やってよかった!

日経新聞の記者さんやネットテレビも取材に来て頂き、本当、初回にしては大成功となりました。授賞式の後の展示、懇親会も、沢山の人に見てもらう事ができまして、凄く面白かった、楽しかった、という声を多く頂きました。

結果、授賞式のある大阪まで来られる方、というほぼ関西限定というようなレギュレーションの中、出品者参加:82名、一般参加:21名、関係者参加:18名という結果となりました。ホント、やって良かったです。

という事で、お約束通りに、次回は夏頃に全国規模で開催予定です。今回、北海道や九州からも問い合わせを頂きました。

またこちらでも決まったら発表しますので、よろしくお願いします!


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